【特集】低コストの温暖化対策であるマングローブの植林-海外調査-
2025年01月20日
低コストの温暖化対策であるマングローブの植林-海外調査-
【大塚俊之(生態系生態学)】
タイ王国・バンコクのチャオプラヤー川
バンコクの中心部を流れるチャオプラヤー川の河口に位置するバンプー(Bangpu)公園は、バンコク市民の憩いの海浜公園で、カモメが集まる桟橋やレストランなどがあります。
また、Bangpu Nature Education Centerでは、マングローブ植林などを通じて荒廃した海岸線の保全のための環境教育を実践する場にもなっています。
(※マングローブは、汽水域のような塩分が含まれる土壌に生育する植物の総称です。)
バンブー公園
Bangpu Nature Education Center
トヨタ自動車などの協力で、地元の子供達の環境教育として、このようなマングローブの苗を用意して、2005年から毎年のように植林を行ってきました。
このため様々な林齢のマングローブ植林地が海岸線に並んでいます。
Rhizophora属の胎生種子
植林のためのマングローブの苗
(※マングローブの一部の種類は、樹上で発芽するため、胎生種子と呼ばれます。)
バンブー公園
満ち潮で海水につかる森
10年程度経過したマングローブ植林地
マングローブ林は海岸線を波浪から守ったり、魚やカニなどのさまざまな生物の棲家として生物多様性を保全したり、多くの生態系サービスを持っています。
近年特に注目されているのは、そのCO2吸収能力の高さです。
このため東南アジアの国々ではマングローブの植林は、低コストの温暖化対策として注目され始めています。
サンプル採取
マングローブ林内で土壌と、植物の根を採取
ところで、タイの市場では日本では見られない様々な食材が売られており、現地の食事は安価でとても美味しいです。
市場に並ぶ豊富な食材
安くておいしい料理
好みのタレで、スプーンとフォークで食べるのが定番
研究においては、Chulalongkorn University(チュラロンコン大学、タイ王国・国立大学)と協力しています。
タイの研究室
Chulalongkorn Universityの研究室の一室
採取した土壌から細根を仕分けています。
マングローブの根
直径階級別の根の仕分け
マングローブは植林してすぐに1mを超える深さにまで根を伸ばし、土壌中の炭素が急速に増加していくことなどが分かってきました(Ohtsuka et al. 2024)。
Ohtsuka et al. (2024) Biomass recovery of coastal young mangrove plantations in Central Thailand. Scientific Reports 14, DOI: 10.1038/s41598-024-61979-3