【特集】人類と植物の多様な関係を求めて-海外調査-
2024年12月10日
人類と植物の多様な関係を求めて-海外調査-
【広田 勲(多様性保全学研究室)】
人類が行ってきた中で「最も古い」農業、焼畑農業(ラオス)
世界には多様な有用植物があり、人類の生存に貢献してきました。人類史において、はじめは野生植物だったものも、人類との関係が深まるにつれ様々に利用されるようになりました。
イネ、コムギ、トウモロコシ、キャベツ、ニンジンなど、人類と深く関わり生存に貢献してきた多くの作物があることはよく知られています。
しかしその一方で、人類と植物の関係を考える上では、こうした直接的な関係だけではなく、間接的な関係も見逃すことはできません。
焼畑跡地に優占するタケ
焼畑農業によって作り出された環境で優占するタケ
Dendrocalamus membranaceus(ラオス)
歴史的に人類は、原生的な環境というよりもむしろ、環境が改変されてできた二次的な環境に適応した植物を主に利用してきたと考えられ、作物以外にも膨大な数の有用植物がそこには存在しているのです。
こうした植物の典型的なものには、例えばタケ(竹)があげられます。
アジアには多様なタケが存在し、長期にわたりアジア人の文化を支えてきました。
現在の日本では竹林拡大の問題等、悪者のように扱われることの多いタケですが、数十年前までは頻繁に使われてきましたし、日本以外のアジア、特に東南アジアでは日常生活に欠かせない植物資源として現在も使われています。
タケで作られた紙
少数民族の地域史が記録されているタケで作られた紙(ラオス)
東南アジアでは、利用されるタケは日本よりもはるかに多様です。それに加えて利用方法も多様です。
海外では、予想外の利用をされていることも多く、海外で遭遇する刺激的な出会いはこの上ない魅力です。
タケノコからできた酢
タケノコからできた酢。発酵タケノコの副産物(ラオス)
タケツトガの幼虫
炒めるとおいしいタケツトガの幼虫(ラオス)
またアジアを飛び出し、広域で様々なタケを観察すると、思わぬつながりを見つけることもできます。
例えばインド洋は、世界史の中の主要な舞台であり、世界をつないできました。
特定の植物に注目すれば、何千キロも離れた地域でも同じ種(しゅ)が分布しており、その痕跡が見えてきます。
スリランカの寺院にあるタケ
スリランカの寺院にあるタケ
Bambusa vulgaris var. vittata
タンザニアの山村にあるタケ
タンザニアの山村にあるタケ
Bambusa vulgaris var. vittata
ここで例としてあげたのはタケですが、多様性保全学研究室では、人類と植物の多様な、そして味わい深い関係を探っていきます。