【特集】トンレサップ湖-海外調査-
2024年11月28日
トンレサップ湖-海外調査-
【吉岡有美(水利環境学研究室)】
トンレサップ湖はカンボジアにある東南アジア最大の淡水湖です。
この湖には4つの特徴があります。
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- 雨季には最大で琵琶湖の20倍以上に拡大、乾季には琵琶湖の5倍程度まで縮小する。
- 雨季には国際河川であるメコン河の水が湖に逆流、乾季には湖からメコン河に向かって水が流れる。
- 湖内の水上集落に30万人を超える人が住む。
- 雨季になると湖の周辺は氾濫しますが、この氾濫水を利用して水田農業を営む。
トンレサップ湖の水上集落
湖周辺の氾濫原
このように湖内、湖周辺、さらにはメコン河下流(ベトナム)の水循環にとって重要な役割をもつ湖です。
しかしながら、湖への水の出入りについては十分に解明されていません。
カンボジアを含むアジアモンスーン地域の面積は世界の14%にもかかわらず、世界人口の60%が暮らしており、水田(コメ)が食を支えています。
湖での降水採取
湖での湖水採取
氾濫原での採水
水田農業は水と密接に関わっています。水の循環は、物質の循環、生態系管理にも繋がっています。
湖への雨、河川、水田、地下水などの水の入る様子、湖からの水の出ている様子の実態を解明するため、水(H2O)に含まれる酸素と水素の安定同位体の量を調べています。
同位体とは同一原子番号を持つものの中性子数が異なる核種です。同位体には、さらに放射性同位体と安定同位体の2種類があります。
安定同位体分析装置
水の種類によって濃度(同位体の場合は量)が異なる場合、調べたい水がどの種類の水に、いつ、どれだけ近くなるかを調べています。
健全な水・物質循環を目指して、国内においても水田、河川などで水の安定同位体を用いた研究を実施しています。
Webオープンキャンパス
(音声有り動画です。)