国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

食品環境衛生学研究室

VBNC状態のカンピロバクターに関する研究

1.環境中のVBNC状態のカンピロバクターの存在状況の調査

環境中に実際にVBNC状態のカンピロバクターが存在するかを、生菌選択的リアルタイムPCR法を用いて調査しています。
これまでに市販鶏肉の調査を行ってきました。しかし、現在用いている条件ではVBNC状態の菌を効率的に検出できないことがわかったため、新たに条件を検討し、再度調査を実施する予定です。大学内にデジタルPCRが導入されたため、定量的な検査も実施して行きたいと考えています。
また、養鶏場周辺の環境中にどの程度カンピロバクターが浸潤しているかについても調査を進めていく予定です。

2.VBNC状態のカンピロバクターの病原性の評価

VBNC状態のカンピロバクターは培養で検出できないため、通常の検査では見逃されています。しかし、実際にVBNC状態となった菌が病原性を維持しているのかは実はわかっていません。私たちの研究室ではマウスモデルや培養細胞を用いて、VBNC状態のカンピロバクターが食中毒を起こす可能性があるのかを研究しています。
VBNC状態のカンピロバクターが環境中に多く存在し、食中毒を起こすことがわかれば、今後の疫学調査や食中毒原因食品の調査などでVBNC状態の菌を調べる必要性を示すことができます。

3.VBNC状態のカンピロバクターの遺伝子発現動態の解析

私たちの研究室ではVBNC状態のカンピロバクターの培養能を復帰させ、再培養できるようにすることを目指しています。しかし、そのための基盤となる情報が不足しているのが現状です。そこで、私たちは実験室内でさまざまな条件で誘導したVBNC状態の菌において共通して発現が変化している遺伝子を探索し、VBNC状態誘導機序を解明すべく研究を進めています。将来的には新たな培地の開発につなげて行きたいと考えています。