国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

食品環境衛生学研究室

研究内容

エクソソーム中に含まれる牛伝染性リンパ腫の発症リスクバイオマーカーの同定

わが国での牛伝染性リンパ腫の発生は増加し続けています。牛伝染性リンパ腫は牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の感染により引き起こされます。BLV感染牛のうちリンパ腫を発症する牛は数%ですが、発症していないBLV感染牛でも、増体率や受胎率の低下、秘乳量の減少、細菌感染しやすくなり治療費が増加するなど生産性が大きく低下します。さらに、リンパ腫を発症した牛は全部廃棄となるため、経済的被害が非常に大きい感染症です。しかし、いまだにどのBLV感染牛がリンパ腫を発症するのか予測することができません。私達はヒトの医療でがん診断に利用されている細胞外小胞(エクソソーム)に注目しました。生乳や血液エクソソーム中にリンパ腫発症リスクバイオマーカーとして利用できるものがないか研究を進めています。

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アミロイド前駆タンパク血清アミロイドAによる細菌感染防御機構に関する研究

AAアミロイドの前駆タンパクである血清アミロイド(SAA)は、多くの動物で保存されており、マウスやウシではSAA1~4のアイソフォームが存在します。私達はこれまでに、マウス腸管上皮細胞において大腸菌刺激によりSAA3 mRNA発現が亢進し、組換えSAA3タンパク質添加により粘液ムチンのmRNA発現が亢進することを明らかにしました。さらに、細菌の刺激によるSAA3 mRNAの発現と炎症性サイトカインのmRNA発現が、マウス、ウシの肺や腸管の上皮細胞でも亢進することをin vitro、ex vivo、in vivoで明らかにしました。このことはSAA3の特徴を活かして自らの自然免疫を活性化させることができれば、食中毒や呼吸器感染症の原因となる病原細菌などに対して、抗生物質に頼らない感染防御が可能になるのでは、と考えマウスとウシで研究を進めています。

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生きているが培養できないCampylobacter jejuniに関する研究

Campylobacter jejuni(C. jejuni)はニワトリやウシ、ブタなどの腸管内に常在している食中毒の原因菌です。加熱不十分な肉(特に鶏肉)を食べることにより下痢や発熱を引き起こします。C. jejuniは環境ストレスにより生きているが培養できない(Viable But Non-Culturable: VBNC)状態となります。通常、C. jejuni の検出は培養により行われるため、培養できないVBNC状態の菌の存在は見逃されている状態です。しかしながら環境中でのC. jejuniの存在様式を明らかにするためにはVBNC状態の菌の存在を無視するわけにはいきません。私達はVBNC状態のC. jejuniについての研究を行い、これまで明らかにされてこなかったC. jejuniの環境中での存在様式を明らかにし食中毒発生リスクの低減に寄与していきたいと考えています。

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家畜・野生動物におけるパラポックスウイルス感染症の分子疫学研究

パラポックスウイルス(PPV)は牛、羊、山羊、ニホンカモシカ、ヒト、海棲ほ乳類(イルカ、アザラシ等)に丘疹、結節などの皮膚疾患を引き起こす人獣共通感染症です。致死的ではありませんが、家畜では症状が口蹄疫と類似することがあり類症鑑別が重要です。PPVは環境抵抗性が強く、本疾病が一度発生すると、畜舎や放牧場、ニホンカモシカの生息エリア、展示動物の飼育エリアなどの環境は長期間ウイルスに汚染されてしまいます。どのウイルスが家畜や野生動物、環境中で広がっているのか、その実態を明らかにするため、野外で使える新しい遺伝子診断法を開発し、分子疫学解析を進めています。

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