国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

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【報告】平成31年度岐阜大学応用生物科学部 『武者修行』

応用生物科学部では、研究の質の向上や学際性・国際性の発展を目的とした若手教員(准教授及び助教)を国内外の研究拠点に派遣する、学部独自の派遣事業(応用生物科学部武者修行)を実施しています。
 
神経機能の評価に必要な検査の技術修得
小畠 結 助教(共同獣医学科)
期 間:令和元年8月26日~9月6日
派遣先:1.日本動物高度医療センター名古屋 (8月26日~27日)
    2.麻布大学 (8月28日~30日)
    3.ACORN獣医神経病クリニック (8月31日~9月3日)
    4.日本獣医生命科学大学 (9月4日~9月6日)
 
脳波検査の実施の様子<研究の目的>
診療、臨床教育および臨床研究をより充実させるため、神経機能の評価に必要な検査 (電気生理学的検査: 脳波検査、誘発電位検査および針筋電図検査) の技術を修得すること。
 
<内容および成果> 
1. 日本動物高度医療センター名古屋
 脳神経・整形科の診療を見学し、臨床症例に対して脳波検査をどのように実施しているかを学んだ。当該施設では、てんかん発作を起こした症例に対して診断の補助的ツールとして脳波検査を実施していた。具体的な脳波検査の実施方法や検査結果の解析法を修得した。
 
2. 麻布大学
 神経科の診療を見学し、症例に対して脳波検査をどのように実施しているかを学んだ。当該施設では脳波計を2種類 (据え置き型とラップトップ型) を備えており、症例の状況に応じて使い分けをしていた。具体的な脳波検査の実施方法に加え、機器の原理や症例の適応についても修得することができた。
 また、健常ビーグル犬を用いた電気生理学的検査の実習に参加し、末梢神経機能の測定法の技術を修得した。岐阜大学では実施していない特殊な末梢神経機能検査 (正中神経機能の評価や、末梢の感覚神経機能検査など) の方法を学ぶことができた。
麻布大学にて 電気生理学的検査の様子
 
3. ACORN獣医神経病クリニック
 一般症例に対して脳波検査、誘発電位検査および針筋電図検査をどのように実施しているかを学んだ。日本動物高度医療センター名古屋や麻布大学では脳波計の記録電極は針電極であったが、当該施設では皿電極を用いており、脳波検査の方法にはバリエーションがあるため、状況によって使い分ける必要があることを学んだ。
 また、椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患に対して、手術中に誘発電位検査を実施し神経機能を評価する方法を修得した。
脳波検査の様子 誘発電位検査の様子
 
4. 日本獣医生命科学大学
 神経内科・神経外科の症例に対する診療を見学した。また、獣医放射線学研究室のゼミに参加し、神経疾患症例についてディスカッションした。さらに、当該大学で実施している臨床研究について説明を受けた。
 ゼミでは脳波検査やMRI検査などの高度医療ツールのデータの評価法に重点をおいてディスカッションが行われており、教員、研修医および学生間で活発な意見交換がなされていた。臨床教育のあり方を今一度考えるきっかけとなった。また、現在実施中の臨床研究について、着想に至るまでの経緯や症例の集積方法等をご教授いただき、今後自身で臨床研究を立案・実施する上で重要な情報を得ることができた。
 
<今後の課題>
 今回の研修により電気生理学的検査 (脳波検査、誘発電位検査および針筋電図検査) の技術を一通り修得することができた。今後は、岐阜大学応用生物科学部附属動物病院における電気生理学的検査環境を整備し、臨床例に対して神経機能の評価をより積極的に行う必要がある。電気生理学的検査は世界的に数少ない施設でのみ実施可能な検査技術であるため、臨床症例に関する報告は未だ少ない。より多くの臨床例を検査し、データを集積することで、獣医療に貢献していきたいと考えている。
 今回、他大学で研修することで、臨床研究や臨床教育に関しても知見を得ることができた。臨床教育および臨床研究といった活動もより一層活発に行うよう、尽力していく所存である。