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掲載日:2018年7月17日

【報告】平成30年度岐阜大学応用生物科学部 『武者修行』

応用生物科学部では、研究の質の向上や学際性・国際性の発展を目的とした若手教員(准教授及び助教)を国内外の研究拠点に派遣する、学部独自の派遣事業(応用生物科学部武者修行)を実施しています。
 
産業動物臨床教育の質的向上への取り組み
松原 達也 助教(共同獣医学科)
期間:平成30年6月10日~平成30年6月28日
派遣先:千葉農業共済組合連合会 南部家畜診療所
 
<研究の目的>
 本派遣では、産業動物臨床教育の質的向上を図ることを目的とする。産業動物臨床実習を受け入れている獣医師の学生および新任獣医師に対する指導内容や診療技術などについて学ぶ。そして、現在の大学における産業動物臨床教育の問題点等を洗い出す。
 上記について学んだことや改善すべき事項を大学における産業動物臨床教育に反映させ、大学における産業動物臨床教育の改善を図る。また、本派遣を通して産業動物臨床に携わる獣医師の先生方との連携を構築し、将来にわたって産業動物臨床教育および研究においても連携を図りやすい環境の構築を目指す。
 
<派遣先での実施内容>
・派遣先診療所での産業動物往診随行
・現在の大学における産業動物臨床教育と卒後(就職後)教育についての討議
・派遣先診療所における診療上の課題に関しての討議
 
千葉県農業共済組合連合会南部家畜診療所の外観 診療所内の手術室にて牛の第四胃変位の整復手術後の様子
写真左:千葉県農業共済組合連合会南部家畜診療所の外観
写真右:診療所内の手術室にて牛の第四胃変位の整復手術後の様子
 
<研究目的の達成度および将来の可能性>
・産業動物臨床教育について
 現在の大学における産業動物臨床教育の問題点の一つに、「産業動物臨床現場の実際(現場)」を学ぶ機会が少ないことがある。派遣先の獣医師との討議でも、産業動物臨床獣医師の仕事に関して「知ってほしい」、「実際に現場を体験して欲しい」との意見があった。小動物臨床教育では、多くの小動物臨床獣医師が従事する一次診療ではなく二次診療ではあるが、大学構内に附属動物病院があることから産業動物臨床よりも「診療現場の学習の場として提供」を行いやすい環境にある。一方、産業動物臨床では「往診」が基本であり、大学だけで診療現場(学習の場としてのフィールド)の確保は難しく、農業共済組合等の診療所に「学習の場の提供」を頼らざるを得ない状況である。産業動物臨床の現場を学ぶ実習について学生が自主的に参加しやすい環境を整えるなど、「産業動物臨床現場の実際(現場)」を学ぶ機会を増やす必要があると思われる。岐阜大学は「NOSAI夏期臨床実習」の取りまとめを担っているが、このような制度を低学年の学生にも積極的に紹介することで、医師の教育における「アーリー・エクスポージャー」のように、「産業動物臨床への理解と学習意欲の向上を図る」といった産業動物臨床教育の改善が期待できる。一方、「産業動物臨床獣医の実際」に関する教育の改善には、産業動物臨床現場の実際(現場)を学ぶ機会を増やすことに加え、現場では学べない内容や現場での学習の理解を助けるような内容を大学側で教えることも産業動物臨床教育の質の改善として求められると考えられる。
 派遣先の千葉県農業共済組合連合会は、大学の臨床実習の受け入れだけでなく、他県の農業共済の獣医師や県職員の獣医師等の臨床研修も受け入れている。しかし、実習や研修内容の基本は往診随行であり、「現場で多数の症例を診る」ことを主眼に置いており、体系的に診療技術を学べるわけではない。この点に関しては、「体系的に診療技術を学べる教育システム」を構築できれば産業動物臨床教育の大きな改善となると思われた。また、指導方針は往診随行の担当となる獣医師によって様々であるため、「産業動物臨床における診療の基礎」を予め習得しておくと良いと感じた。産業動物臨床における診療技術等の習得は卒後教育が主体となるため、具体的な教育内容については十分な検討が必要であるが、臨床現場で予め習得しておくべき事項を大学教育である程度カバーすることで、卒後の教育に関してもより効果的に学ぶことが可能になるのではないかと思われる。

・産業動物臨床に携わる獣医師との教育研究上の連携について
 本派遣において産業動物臨床教育研究上の連携の可能性を検討する機会を得られた。研究に関しては、千葉県農業共済組合連合会南部家畜診療所における診療上の問題について議論する場があり、今後の新たな研究テーマとして派遣者側でも取り組むことができるか検討予定である。具体的には「繁殖障害」、「運動器障害」、「飼養管理方法」などの診療上の 問題を派遣先の獣医師から提示され、共同研究の可能性について引き続き派遣先と調整する予定である。本派遣により、教育研究上の連携を図りやすい環境を整えることができたことは、今後の研究活動の幅を広げるという意味でも、とても良い経験となったと考える。
 教育に関する連携については、先述したように、大学は小動物臨床教育と異なり「臨床現場の実際という学習の場の提供」さえ大学だけは困難な状況である。産業動物臨床教育を大学だけで充実させることには限界があることから、現場の産業動物臨床獣医師との連携を図りやすい環境の構築は、産業動物臨床教育の改善にも活かされると考えられる。
 
 本派遣のテーマであった「産業動物臨床教育の質の改善に関する取り組み」は、今回の派遣によって臨床現場の獣医師との連携が重要であることを認識した。そのため、本派遣により千葉県農業共済組合連合会の産業動物臨床獣医師との連携を図りやすい環境を構築できたことは大きな進展であると思われる。今後、本派遣で得られた連携を図りやすい環境を活かし、産業動物臨床教育の質の改善に努めたい。
 


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