研究内容
精子に関する研究
豚の夏季不妊症に関する研究
毎年夏に受胎率が低下する夏季不妊症を緩和することを目的として、夏季不妊症の精子機能を数値化する研究、夏季の精子機能の数値化、及び数値が低下した夏季の精子を回復させる試み、を行っています。
人工授精した月別の受胎率(Murase et al., J. Reprod. dev. 53: 853-865, 2007)
美濃柴犬の人工授精に関する研究
2015 年ごろより岐阜県美濃柴犬保存会からの御依頼により、美濃柴犬の個体数が減少していることから、個体数の回復のための人工授精に関する研究を行っています。
卵子に関する研究
牛卵子の輸送法に関する研究
わが国においては、市場価値の高い黒毛和種の (体内で十分発育し、体外で発育させる必要のない) 卵子から体外受精により生産した受精卵を乳牛に移植し、代理母出産により子牛を得る取り組みが行われており、酪農家の貴重な収入源となっています。
経腟採卵 (Ovum pick-up; OPU) は、超音波診断装置で生きた牛から卵子を吸引する技術であり、優れた血統の牛から繰り返し卵子を採取できる利点があります。しかし、OPU技術に加えて体外受精技術を有する獣医師は限られており、その普及は未だ限定的です。
私たちは、獣医師がOPUで採取した卵子を品質を維持したまま培養拠点に輸送する手法を開発することで、OPUのさらなる普及ひいては酪農家の所得向上に貢献したいと考えています。
卵子の体外発育培養に関する研究
出生時の動物の卵巣内には多数の卵子が存在しますが、そのほとんどは排卵することなく失われます。卵巣内で失われる運命にある卵子を体外に取り出し、体外受精により受精卵にすることができる大きさまで発育させることができれば、効率的な家畜生産のみならず、生殖医療や希少野生動物の保全にも有用であると考えられます。
発育途上の卵子を体外で発育させる技術は体外発育培養 (In vitro growth; IVG) と呼ばれ、マウスではIVGにより最も小さな卵胞である原始卵胞からの産子生産が実現されています。しかし、それ以外の動物では、原始卵胞よりも大きな二次卵胞に由来する卵子からでさえも産子が得られていません。
私たちは、「全ての肉牛を乳牛が産む未来を実現する技術開発とその汎動物学的応用」を目標に、より多くの卵巣内の卵子を活用するための新しい体外発育培養技術の開発に取り組んでいます。