国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

野生動物資源学研究室

誘引誘導型捕獲法

研究目的

イノシシやニホンジカの捕獲においては、従来「経験や勘」が重要視されており、捕獲技術の向上を目的とした体系的な育成プログラムはほとんど存在しない。そのため、新たに担い手となる猟師への技術継承に長い時間を要することが課題となっている。
しかし、「経験や勘」とされる知識や技術を詳細に解析すれば、その根拠は行動学、解剖学、環境学、生態学、気象学などの多様な科学的データとして整理・数値化することが可能である。
本研究では、「経験や勘」に基づく捕獲技術を科学的に分析することで、高捕獲効率を示す狩猟者の行動特性を明らかにし、捕獲技術の最適化と継承システムの構築を目指す。

くくり罠を用いた効果的な捕獲「誘引誘導型捕獲法」2013~

近年、野生獣類の個体数増加に伴い、農林業や自然生態系への被害が深刻化している。一方で、捕獲従事者の減少により、一定の捕獲圧を維持することが難しくなっている。そのため、捕獲従事者一人あたりの捕獲効率を向上させる技術の開発が求められている。

くくり罠は安価で扱いやすい利点があるが、設置場所の選定には獣道の的確な発見や設置位置の判断といった高度な技術が必要である。このため、捕獲成功までに時間と労力を要し、結果として捕獲意欲の低下や被害拡大につながる場合があった。

そこで本研究では、初心者でも低コストかつ高効率に獣類を捕獲できる「誘引誘導型捕獲法」を開発した。本手法は、誘引された獣類を罠へと自然に誘導し、効果的に捕獲を行う方法である。
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手順

1.トレイルカメラによりシカの生息を確認する。

2.確認地点付近で誘導体(例:倒木)を見つける。

3.誘導体の上部中央に米ぬか(約500 ml)を撒き、シカを誘引する。

4.誘引が十分に進んだ後、トレイルカメラでシカが前肢を置く位置を確認する。

5.前肢を置く位置にくくり罠を設置する。

文献

・けもの道 2014年4月号
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