国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

多様性保全学研究室

研究内容

農業システム、農耕地生態系、自然資源利用の実態と成立要因、変遷などを明らかにする研究を行っています。日本と東南アジアの農山村が主な対象です。表面的に観測可能、把握可能な事実の理解とともに、それを支える構造の理解に努めます。これらを通じ、これまで見過ごされてきた人と自然の関係を明らかにします。

shirotori_123806.jpg

農耕地生態系、焼畑、ホームガーデン

人類は生態系に影響を及ぼし、また生態系から様々な恩恵を受けてきました。そこでは人類は、基本的には個別の動物や植物ではなく、生態系全体と向き合ってきたのです。

焼畑は、しばしば「もっとも原始的な」農業(農耕)であるといわれ、環境に対して長い間、大きな影響力を行使してきました。日本でも焼畑は行われ、現在私たちが目にする山の自然の多くは、焼畑の影響を受けてできあがってきました。

東南アジア大陸山地部には、焼畑に依拠した暮らしをしている人々が多くいます。そこでは焼畑を実施することにより様々な環境が生まれ、それを利用した暮らしがあります。焼畑は人類にとってどのような意味を持ってきたのか、現在の焼畑を通して考えています。

またホームガーデンは主作物を栽培する畑地とは異なり、補助的な生産を担っています。補助的ではあるものの、人々の食や食文化を支える作物が多く栽培されており、重要です。どういったものがどのように残され、栽培されているのか、調べています。

有用植物資源、タケ、雑穀、在来作物

農耕地生態系には多様な有用植物資源があります。東南アジアでは、1つの農村でも数百種にのぼります。この多様な資源がどのように地域社会を支えてきたのかを明らかにすることは、人間社会と高い生物多様性を有する環境との持続的な共存のあり方を考える糸口になると考えています。

また人間が作り出した環境には、様々な植物が適応しています。こうした植物を人類は利用してきました。そこにある環境と、その利用のさまは、地域を特徴づけます。

アジアに人為的撹乱環境は多くありますが、そこに適応した植物の中でもタケは、最もアジア人の文化に根付いた植物だといえます。歴史を通じてタケは、生活のあらゆる場面に登場します。今でこそ使われなくなりつつあるタケですが、これを指標植物として民族植物学的側面から調べることにより、アジア人がどのように自然と付き合ってきたのかを知ることができます。

また農地にも、依然として様々な作物が残存し、小規模ではあるものの地域の食文化を支えています。様々な野菜や雑穀は、地域の食文化を特徴づけています。当研究室ではこうした作物を発掘し、残存理由を探っています。

【特集】人類と植物の多様な関係を求めて-海外調査- - 生物圏環境学科 |

student110_bioenv.jpg

生業多様性

アジアの平野部や山間盆地には水田が広がっています。一方山地部では、平野部とは異なり、稲作が圧倒的な生業の中心とはならなかったため、複合的な活動が行われてきました。また山地部は、安定的な農業生産を行うことが平野部より難しいため、こうした多様な生業活動はリスク分散に寄与してきました。 多様な生業活動と多様な環境は連動、一体化し、一つの生業システムを作っています。


一方、東南アジアでは、グローバル化に伴って、土地利用の単純化が起きています。単一の商品作物が大規模に栽培され、地域生活はグローバルな市場への依存度をますます高めています。地域生活はある意味、市場の価格変動のリスクを抱えていますが、このような中、これまでリスク分散の役割を担ってきた複合的な生業活動は、グローバル化の影響のもとでどのように役割を発揮することができるのでしょうか。

例えばグローバル化の影響の特に大きいラオスと中国の国境沿いの農村の調査では、住民は多様な自然資源採取や家畜飼育を維持しながら新しい作物を導入しており、リスクを抑えながら新しい生業を導入していることがわかりました。

この例のように、当研究室では、多様な環境―生業関係のダイナミクスの理解を目指しています。これを通じて持続的な農村発展のあり方を考えます。