国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

食品流通工学研究室

Abdi君の論文がApplied Food Research誌に掲載されました。

当研究室の博士課程学生のAbdi君の論文がApplied Food Research誌(IF:5.4, Q1)に掲載されました(2026.6.17)。

日本では、年間約100万トンものバナナを海外から輸入しています。検疫上、黄色く熟したものは輸入できず、もっぱら緑色の未熟なバナナ(緑熟バナナ)が輸入されます。緑熟バナナは輸入商社の保管庫で一時保管されたのち、バナナ加工施設(通称:バナナ室(むろ))でエチレン処理によって黄色く熟させてから、国内で流通します。昨今の国際情勢や燃料費の高騰により、バナナの輸入体制は必ずしも盤石とは言えず、一定量を保管できる体制の構築が求められています。ご存じのとおり、バナナは低温に弱いため、一時保管は一般に13.5℃で行われます。この温度帯ではバナナの追熟も進むため、緑熟バナナの保管可能期間は、長くても2〜3週間にとどまります。この期間をさらに延長できる技術はないか----この問いに答えようとしたのが、本論文です。

野菜や果物には、わずかなストレスを与えると保存可能期間が延びるという現象がみられます。乾燥や熱は、その代表的なストレスです。本研究では、超音波処理による微弱な物理ストレスを与えることによっても、バナナの追熟が遅くなり、保管可能期間が延びることを発見しました。ただし、どのような強さの超音波でも追熟遅延が起こるわけではなく、ある限られた超音波出力と処理時間の組合せのもとでのみ生じる、特異的な現象です。さらに、メタボロミクスと呼ばれる代謝物の網羅的な解析を行ったところ、細胞膜脂質の材料となる2-アミノエタノールが顕著に減少することが明らかとなりました。超音波処理によって細胞膜が分子レベルのダメージを受け、通常の追熟に先んじて細胞膜を修復するための代謝を行わざるを得なくなったことが、追熟遅延の原因ではないかと考えられます。

バナナは、世界で最も多く生産・消費される果物のひとつでありながら、流通の各段階で大量に廃棄されているのが現状です。本技術が、その保管可能期間を延ばすことを通じて、フードロスの削減に繋がることを願ってやみません。

(論文はこちら)

Abdi, Usami S, Nakagawa K, Thammawong M, Tsuta M, Nishimura K and Nakano K: Ripening delay and metabolomic responses in mature green 'Cavendish' bananas treated with ultrasound, Applied Food Research, 102296, 2026.

https://doi.org/10.1016/j.afres.2026.102296