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掲載日:2013年11月14日

【報告】平成25年度岐阜大学応用生物科学部 『武者修行2』

教育研究プロジェクトを推進するため、研究の質の向上や学際性・国際性の発展を目的に、学部独自で『武者修行』と題し、若手教員(准教授および助教)を国内外の研究拠点に派遣する事業を行っています。
 
草地の生物多様性を保全する放牧管理技術の確立、八代田真人准教授(生産環境科学課程)
 
期間:平成25年10月5日~10月13日 (8泊9日)
 
派遣先:Institut National de la Recherche Agronomique-Center de Clermont-Ferrand-Theix
(フランス国立農業研究所-クレルモンフェラン-テ センター)
 
フランス国立農業研究所-クレルモンフェラン-テ センター 日本国内では、農業人口の減少、高齢化および収益性の低さから農地および林地の利用放棄が増加し、農業生産および里山の生態系の保全の点で問題となっている。同様の問題は、ヨーロッパ各国でも発生しており、農業生産の条件不利地とされる場所では、農地や草地の利用放棄が起きている。このため、ヨーロッパの農業研究機関では、早くからその対策に乗り出している。今回は、条件不利地の一つである半自然草地において、放牧により家畜生産を持続的に行いつつ、生物の多様性を保全する研究に関して先進的に取組んでいるフランス国立農業研究所(INRA-Center de Clermont-Ferrand-Theix)において5日間の研修機会を得た。INRA-Center de Clermont-Ferrand-Theixは、フランス南部オーヴェルニュ地域圏の首府であるClermont-Ferrandの郊外にある。この地域はフランスの中央高地と呼ばれ、地勢は山地および台地から成る。山地や台地には、牧草地や半自然草地が広がり、多くのウシやヒツジが放牧されている(写真)。土地条件としては、耕地が成立しない条件不利地にあたる。
 
 研修の主な内容は、1)Ecological rotational grazing(生態学的輪換放牧)と呼ばれる「植物の開花期に放牧地の一部を禁牧し、開花を促進させ、訪花性の昆虫を誘引することで、動植物の多様性を増加させる」放牧方法および 2)BotaおよびPepi(それぞれ、「生物多様性」、「感覚」、「労働」、「自立」と「生産」、「効率」、「惑星」、「革新」のフランス語の頭文字をとったもの)と呼ばれる低投入酪農の大規模システム研究について、その研究の背景、目的および現在までの結果を研究担当者らから紹介してもらい、議論すること。さらに、試験地を訪問し、実際に用いられている実験手法を習得することであった。
 
 生態学的輪換放牧では、およそ40頭のウシと10 haの草地が、また低投入酪農システムの研究では、48頭のウシと100 haの試験地が供されており、日本では実現不可能な規模の研究であった。いずれの研究も、地域農業の将来的な方向を示すという点が非常に明確だったのが興味深かった。すなわち、POD(原産地名称保護制度)チーズを中心とした地域原産品を製造し、地域農業を活性化させること、また、単なる家畜生産に留まらず、放牧を通して生態系サービスを提供しようという意図が明確だったことである。実験条件はかなり極端に設計されているため、率直に言って研究結果をすぐに現場に適用できるわけではない。しかしながら、将来の方向性を示すという「研究機関」の重要な役割に改めて気付かされた。現段階では、研究は必ずしも意図通りに進んでいるわけではない。とくに低投入酪農システムでは、乳牛への栄養供給が不十分で、そのため繁殖がうまく行っていないとのことであり、理想的なシステムの実現には、やはりいくつもの困難がある。研究は修正を計りながら今後も進めていくとのことであった。
 
 この他に、当該機関で実施されている研究について10人程度の研究者と個別に1-2時間程度の議論をする機会を頂き、それぞれの研究内容への理解を深めた。また私自身の研究内容についてプレゼンテーションさせて頂くという貴重な機会も得られた。5日間という限られた期間であったが、非常に内容の濃い研修期間を過ごし、各実験内容や手法の理解だけでなく、畜産学の研究者としての意味を再考する良い機会となった。
 
 最後になりますが、INRAにおいて研修のコーディネートをして頂いたDr. Anne FARRUGGIA、および研究内容の議論をさせて頂いた多くの研究者の皆様、またこのような機会を与えて頂いた応用生物科学部の皆様に感謝いたします。
 
八代田真人准教授の所属する動物生産栄養学研究室へ


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