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掲載日:2010年4月 5日

岐阜大学応用生物科学部附属比較がんセンター(2010年4月1日設置)

人と犬猫をはじめとする伴侶動物の死因のトップはがんであり、がんの克服は社会の要請です。
応用生物科学部は比較がんセンターを設置し、人と動物のがんの克服を通して広く社会に貢献することを目指します。
 併せて、比較がんセンターは、本学の学部教育研究にも寄与していきます。


設置趣意書(抜粋)

1. 比較がんセンターの設置目的
 岐阜大学応用生物科学部附属比較がんセンターは、わが国における『比較腫瘍学』の実践と発展のための教育研究拠点を形成すること、さらに得られた成果を伴侶動物とヒトのがん克服に還元することを目的に設置する。


2-1.『比較腫瘍学』
 比較腫瘍学とは、伴侶動物とヒトのがんの疫学、病態、診断、治療、予後を比較し、その類似性および相違性を明らかにすることによって、伴侶動物とヒトのがんを克服することを目的とした学問領域である。


2-2.比較がんセンターの設立理由
 ヒトの腫瘍の解明を目指す上での従来の動物の利用は、実験動物を用いたものがほとんどであり、遺伝的に均一な特殊な動物を用いた特殊な研究と言わざるを得ないものであった。例えば、新薬評価において、マウスのがんに有効となっても、ヒトの臨床試験においては無効となるケースが多いことも、実験動物を用いた限界の一例である。現在、ヒトの腫瘍治療は、オーダーメイド医療という「個人」を対象としたステージへと進んでいる。現在の伴侶動物がん臨床も、獣医療の高度化によりヒトの腫瘍に匹敵した治療が行われるとともに、その研究対象は動物の「個体」について高度かつ詳細な臨床情報を有するものとなっている。このような状況の中で、伴侶動物臨床から様々な研究を発進することで、実験動物によるがん研究とは異なった視点によって、ヒトのがんの克服に繋がる成果が生まれるものと思われる。
 また、ヒトにおいてオーファンな腫瘍(発生すると重篤にもかかわらず、発生が稀なので研究が進まない腫瘍)を研究するにあたり、ヒトでは発生が少なくても、伴侶動物では発生が多い腫瘍があり、それらを研究することで、伴侶動物のみならず、同じ種類のヒト腫瘍の克服が実現できる。
 本センターの理念として、様々な学問分野に対してオープンな立場をとることも特徴としたい。我々が独断的に腫瘍を「比較する」のではなく、いろいろな分野の研究者に「比較して」もらい、ヒトの病態の解明はヒトの臨床研究、もしくはヒトの病気を再現した実験動物の解析のみで検討するだけでなく、様々な動物の病態の比較によって、複眼的視点で突破するという利点を生かすことも重要である。この視点は魚類から哺乳類までを対象とする獣医学分野の研究者には日常的なことである。この複眼的視点は新たな研究成果を生み出す源となり、その意味でも、獣医学と他分野との共同研究に重点を置くことは極めて重要だと考える。
 また、伴侶動物とヒトのがんの克服を目指す比較腫瘍学において、比較腫瘍学の概念の普及と伴侶動物がんの臨床教育の向上は不可欠である。そのための卒前卒後における教育活動を展開する。


3. 比較腫瘍学の国内外の状況
 米国では、2003年に国立がん研究所(NCI)のがん研究センター(CCR)の中に、比較腫瘍学プログラム(COP)が開始された。COPは自然発生腫瘍の犬猫を用いて、がんの生物学特性の研究と新規治療薬(治療法)の開発を目的に発足した。その成果は動物がんの治療を介してヒトに貢献することにあるが、その前段階で貴重な情報を提供してくれる動物たちにもその恩恵を与えようというものである。COPにおける伴侶動物がん症例を用いた新規治療薬(治療法)の評価は、全米の18獣医科大学からなる比較腫瘍学治験コンソーシアム(COTC)によって多施設臨床試験が実施される。なお、研究対象とするがんは、非ホジキンリンパ腫、前立腺がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、メラノーマ、軟部組織肉腫、骨肉腫等があげられている。
 一方、わが国においては比較腫瘍学を前面に掲げた動きは今のところみられない。しかし、比較腫瘍学の基盤となる伴侶動物がん臨床の教育研究環境の整備や、米国での動向を考慮すれば、わが国においても比較腫瘍学の実践と発展の条件は整いつつあり、比較腫瘍学の教育研究拠点の設置は是非必要である。


4. 岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の状況
 平成16年度に国立大学最初の獣医臨床腫瘍学研究室の新設と、附属動物病院における腫瘍科の開設を断行した岐阜大学は、社会のニーズを迅速かつ的確に取り入れた先見性を持つ。また、獣医臨床腫瘍学研究室および腫瘍科はその役割を十分に果たしている。腫瘍科の紹介症例数は年毎に増加しており、附属動物病院は地域の要請に応えるために腫瘍診療を特色にした病院運営を展開しつつある。平成21年度には、大学の支援の基で動物病院の増築および高エネルギー放射線治療装置の導入が決定している。そして、腫瘍科の発展が比較がんセンターを機能させ、比較がんセンターの発展が腫瘍科の高度獣医療を進展させることを志向している。動物病院腫瘍科および比較がんセンターの発展は、同時に伴侶動物がんの臨床教育の向上に結びつくものである。


5. 比較がんセンターの組織と教育研究内容
 比較がんセンターは応用生物科学部を基盤として、附属動物病院と密接な協力体制を構築し、さらには医学、薬学、工学などの学内外の生命科学関連領域とネットワークを組んで、幅広い教育研究活動を展開する。


比較がんセンターには次の3研究部門と教育研究連携調整室を設ける。
(1)比較がん疫学部門
・動物がんの登録化とデータベースのシステム構築
・動物がんデータの双方向解析システム
(2)比較がん病理病態学部門
・動物がんの病理病態学的研究
・動物がんの分子遺伝学的研究
(3)比較がん臨床研究部門
・新規診断・治療法の開発
・比較臨床試験の実施
(4)教育研究連携調整室
・学内外の様々な分野との教育連携および共同研究の窓口


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