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掲載日:2008年6月11日

「岐阜大学大学院応用生物科学研究科創立及び岐阜大学農学部創立八十五周年記念行事式辞」

岐阜大学大学院応用生物科学研究科創立及び岐阜大学農学部創立八十五周年記念行事

本日は、私たちの新しい研究科の設置と創立85周年の式典に多数ご参集いただき、誠にありがとうございます。

 本年は、我々の学部にとって、まさに記念すべき年です。応用生物科学部が設置後4年間を過ぎ、この3月に初めて卒業生が巣立っていきました。そのうえ、この4月には、学部に続き応用生物科学研究科修士課程を無事に立ち上げることができました。学部の正面玄関に、金城俊夫元学長に揮毫していただいた額を掲げ、ここに学部名と研究科名を一致させることができました。このことをまず皆様にご報告いたします。

それに加えて、本年は、大正12年の岐阜高等農林学校に源を発する農学の歴史が、岐阜農林専門学校、農学部、それに農学研究科修士課程、さらには連合獣医学研究科と連合農学研究科の2つの博士課程を加え、平成16年には、現在の応用生命科学部の創設に至り、今日、85周年を迎えております。この長い発展の歴史を祝していただきたいと存じます。

 我々の応用生物科学部とその研究科は、紛れもなく農学に源流を発し、教育と研究の柱に「食料の安定供給」「環境の保全」「獣医学・公衆衛生」を掲げています。農学のDNAを、応用生物科学の表現形に絞り、社会に広めてゆきます。

 現代社会は、食料の質と量の確保、自給率の増加、劣化した自然環境の保全、人獣に関わる様々な病害の克服など、我々の生活に根元的かつ緊急の問題を抱えています。我々の学部は、それら最も重要な課題に焦点を合わせて、挑戦してゆきます。農林業、畜産業、そして環境に関わる応用生物科学の課題は、今後、非常に重要になると思われます。この式典に際して、我々は、このような重要な任務を、皆様と学生教職員が一丸となって滞りなく行う、このことについて決意を新たにしたいと存じます。

 それには、農学の心を尊び、それを応用生物科学の考え方と技術にまとめて、問題に立ち向かわねばなりません。とくに大切なのは、農学の心を持ち続けることだと思います。私の専門は森林学です。私は、今年4月の入学式で、スギ花粉症を例にとって、生物資源を考えるときに、人の生業と歴史を理解することが大切であることを、新入生に伝えました。少し時間をいただいて、そのことを、お話させていただきます。

現在、日本の国土の7割が森林で覆われています。なんと、その森林の4割がスギやヒノキの造林地です。ご存じのように、毎年春に、この造林地から膨大な花粉が風で飛び、多くの人が花粉症に悩むようになり、スギの木は悪者になってしまいました。しかし、杉は本当に悪者なのでしょうか?

このスギ造林地は、40年前の拡大造林という国家的造林計画に端を発します。戦後の荒れていた山地に、我々の先輩は、それを復興するために、営々と植林を行ったのです。山村は、日本にとって重要な地域です。そこに住む人たちが、拡大造林を規範にして生活することできたからこそ、その地域の自然が維持されたのです。人の生業や努力を評価しないで、スギ花粉症をもたらす造林地の存在だけを悪者にすることはできないのです。

すなわち、生物資源を扱う者は、人の生きる歴史そして時間の概念を、理解しなければなりません。これこそが、農学の基本であると思います。現代社会では、生物の多様性の保全や、自然の持続を、40年前より進んだ形で実現しなければなりません。その受け皿として、応用生物科学は、現代社会の持つべき新しい倫理と技術革新を組み込んで、たとえばこのスギ林問題を解く総合的な解決策を具体的に示してゆくのです。

さて、我々の応用生物科学部では、最近、いくつかの優れた教育研究の成果が形となっています。たとえば、文部科学省が優れた取り組みと認定したGP教育プログラム「ぎふ公民館大学」の活動では、毎年、多数の学生が岐阜県の山村拠点を訪れ、現地の方と一緒になって、農のこと、地域や風土のことをともに考える試みを行っています。研究面では、優秀な研究拠点として認定された、COE「野生動物の生態と病態からみた環境評価」を実施し、そして、元の山地研、いまの流域圏科学研究センターを中心とするCOE「衛星生態学創成拠点」のプログラムに関わっています。今年からは、本学部の木曽真教授を中心として、世界トップレベル国際研究拠点のサテライトとして「物質-細胞統合システム」に関わるプログラムが走り出しました。以上のように優れた教育と研究に関わる内容をもつ学部は多くはないはずです。さらに、これからは、県の教育機関との共同で、農業教育に関する「岐阜県域システム」を構築する構想を持っています。

この85周年に続く百周年を迎えたときに、これら現在の応用生物科学部が持つ萌芽を、立派な樹木に育ててゆきます。これには、ご来席の皆様のご協力が必要です。どうか、我々の学部を、今後もご支援くださいますようお願い申し上げます。われわれは、皆さんとともに、応用生物科学を誇りとして、歩んでいきたいと存じます。

この式典では、本学部卒業生であられる真鍋賢二・元環境庁長官、ならびに、岐阜県知事殿、岐阜市長殿、森秀樹学長から、祝辞をちょうだいいたします。また、記念講演には、岩永勝先生からお話をいただきます。そして、85周年をつづる立派な記念誌もできました。

最後になりましたが、先輩諸氏、同窓会、後援会の皆様には、大変なご協力をいただきました。遠方からお越しいただいた静岡大学農学部長、信州大学農学部長、岐阜県立高等学校長の皆様、県農業関係の皆様、本学の理事学部長の先生方、これらご列席のすべての方に御礼申し上げます。本学部の事務職員の方には、準備で大変お世話になりました。

以上、われわれ応用生物科学部の決意を示すことにより、式辞とさせていただきます。

平成20年6月7日 応用生物科学部長 小見山章


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