国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 応用生物科学部

施設環境工学研究室

研究内容

西村班

農業用ダムの漏水に関する解析および実験による検討

農業用ダムは多目的ダムに比べ比較的小さく、土で造るものがほとんどです。最近では、老朽化がすすみ大雨による急激な貯水量の増加で決壊するものが少なくありません。その原因の一つとしてダムの表面や内部に存在する亀裂を貯水による水圧が大きくすることが考えられます。このことを防止するために、亀裂の発生箇所の予測や亀裂が発達するかどうかの検討を室内実験やコンピューターを用いたシミュレーションにより行っています。
また、農業用ダムは一般にため池と呼ばれるものが多く、周辺地域の親水域となっていることが少なくありません。したがって、環境に調和した工法や材料でダムを造ることが重要になってきます。したがって、効率や建設費とともに自然環境や生活環境に配慮し生態系への影響の少ないダム造りを検討する必要があります。

DNAによる農業用水路内のメダカの分析

以前の農業用水路は用排兼用水路が一般的であり、魚類の移動も容易にできました。しかし、近年はより適切な水管理ができるように用排分離が進み、水路の段差が大きくなりました。これにより魚類が排水路から用水路へ移動することは困難になっています。つまり以前に比べ魚類の移動できる範囲が制限されてきています。
しかし、その影響がどのようなものなのか、生物の外見からでは判断できない場合が考えられます。そこで、遺伝子型による分類が進んでいるメダカに注目し、農業用水路内におけるメダカの遺伝子型により分類します。そして、その結果より水路内でのメダカの移動範囲を推定し、用水路の整備が生態系に与える影響を調べようとしています。
また、メダカのDNAの採取は尾びれの一部を切り取ることにより行い、しばらく水槽で飼い尾びれが再生したらもとの水路に戻します。

西山班

ダム基礎岩盤の壊れ方と強さの解析

農業用水の水源を確保するダムにおいては、何よりもまず安全であることが求められます。中でも特に、ダムの本体である堤体の決壊を避けなければなりません。決壊の起こり方には、上記の西村班の説明にあるような水による土構造の破壊の他に、ダムの基礎をなす岩盤の破壊が起こり得ることが知られています。ダム基礎岩盤の決壊は、堤体が貯水池からの水圧で押されてついにはすべる、という機構で起こり、このとき岩盤に生じる「切れてずれる」タイプの破壊を「せん断破壊」といいます。
ここに、せん断破壊は、小さい破壊が徐々に起こった上で最終的な破壊面が形成される、という複雑な機構で起こるため、実はその詳細は十分に明らかにされていません。もちろん、実務においては、詳細とは逆に全体を包括して考えて、さらに余裕を見ることによって、十分な安全性の確保を実現しています。しかし、難しいとはいえ大事なところでの未解明事項は、より人間の意図を反映させやすい新規建造よりもむしろ、長期間の供用や災害の後の診断のように微妙に人間の管理下から外れた状況へのより細やかな対応が求められる場面において、要所、要所で難問となって浮上してきます。
私たちは、初めて人類がダム基礎岩盤決壊を経験した直後からダムの現場で実施されてきた原位置試験をメインの題材としながら、岩盤の壊れ方、さらにはその過程で発揮し得る耐力の解析を行っています。現在までに模型実験とコンピュータシミュレーションを中心とした検討を進めてきており、これから当面は後者を集中的に実施して、基礎的な知見をまとめたいと考えています。

アーチダム堤体継ぎ目の挙動解析

また、最近の地震を受けて、ダムでも耐震の診断が急ピッチで進められています。その過程で明らかとなってきた数々の課題の中で、私たちはわが国では知見の乏しいアーチダムに注目し、その堤体の保全管理への貢献を目的とする解析の実施を予定しています。上記の岩盤のせん断の研究で用いる解析手法と得られた知見を応用し、さらに振動解析の手法を統合して、アーチダムの弱点となることが懸念される堤体継ぎ目の挙動の解析に取り組みたいと考えています。